今回は、雑貨屋さんでアルバイトをしているA子さんから聞いたお話から「認知症に対する理解を深めるためにも、違う世代の同居人が必要」という事についてお伝えいたします。
A子さんは、ご家族に数年前から認知症のお年寄りがいて、認知症の介護経験が長い方です。
気になるお客様 B紳士
彼女はいつも買い物に来て下さる70代位の男性のお客様(仮にB紳士とします)がとても気になっていました。
お会計の時、自分でお金を払う事もあれば、A子さんの方にお財布を開けて、その中からとってくれと言われるときもあります。B紳士は一見、優しそうな普通のお年寄りに見えますが、A子さんは違和感をずっと感じていました。
ある日、お年寄りの女性がA子さんのレジに来ました。
あまり見慣れないお客様でしたが、A子さんはその女性のお顔をみて「ハッ!」としました。
なんと目の周りに大きな青いあざがありました。
どう見ても、転んでできたというよりも、「殴られた」という感じの大きなあざです。
その女性がお会計後、袋詰めの台に買い物かごを持って行って袋に詰めていたら
その隣に、あのB紳士が近寄ってきて、何やらその女性に言っています。
その女性は、B紳士に少し怯えた様子で、おどおどしていました。
「なにのろのろしているんだ!」とか「早くしろ!」とか
小声で、しかし強い口調でその女性を叱っているのが聞こえてきました。
そのやりとりで想像がつきました。恐らく、お二人は夫婦だと思われます。
そして、A子さんが以前から感じていた「違和感」にその時納得しました。
B紳士への違和感。それは「認知症」かも。
B紳士は、一見、普通に見えますが、恐らく認知症になられているとA子さんは気づきました。B紳士に、認知症特有の表情をA子さんは感じていたからです。
そして不幸なことに、奥様であろうその女性は、恐らく、ご主人が認知症であることに気が付いていないのではないでしょうか。
「昔より少し気性が荒くなった」としか思っていないでしょう。
しかし、目をめがけて殴るのはかなり危険です。
同居していた母が認知症になりたての頃もそうでした。
温厚な性格で、いつも笑顔だった母が、認知症が進むにつれて狂暴化し、
家のガラスの窓を壊されたこともありました。
毎晩、私の枕元にやって来て、わめき散らしていました。
きっと、どんどん変わっていく自分を理解できなくて、混乱していたのかもと思うと
母がかわいそうでなりません。
もしかして、B紳士ご夫妻は、二人暮らしなのではないでしょうか。
同居する若い人がいれば、「認知症」という可能性も疑えるし、
その人がいくらかクッションになるでしょう。
しかし、もしも二人だけなら、B紳士の暴力は奥様にまっすぐ向かってきます。
そして、愛する奥様に暴力を振るっている現実にB紳士は気づかずに、暴力はエスカレートしていくのでは。
認知症の初期は「普通の人を取り繕う」事が得意
例えば、一週間に1回とか、一か月に1回とか、お子さんがやってきても
お父様が認知症ではないか?とは気が付かないと思います。
認知症の人は、いつもの家族に対しての態度と、
たまーに来るお客様に対しての態度が違います。
母の時もそうでした。
母の奇行を、嫁いでいった姉に時々電話で話していました。
しかし、たまに姉がやってくると、母はいつもと違ってしっかりしていました。
「なんだ、電話では、もうどうしようもない位におかしくなっていると言ってたけれど
普通じゃん。あんたの思い過ごしだよ。」と姉に言われたことが何度かありました。
そうなんです。母は来客があると、なぜかしっかりしていました。
地域包括支援センターの職員の方や、デイサービスの方がいらっしゃった時も
てきぱきとしていて、いつもの母とは違いました。
でも、その人たちが帰ってしまうといつも通りの、ねじが一本、外れそうな感じに戻ります。
初期の頃はそうやって、自分の感情をコントロールできていました。
その後、症状がどんどん進み、「取り繕う」考えも思いつかなくなりましたが。
家族の人が、その家のお年寄りを殺害する事件が時々起こります。
そういう事件を聞くたびに、殺害してしまった方はどういう人なのだろうか?
殺したくて殺したのではないのではないだろうか?
どこにも助けを求める事ができずに起こしてしまった事なのではないだろうか?
長い間、母を介護してきましたので、介護の厳しさは身に染みています。
亡くなられた方はもちろんですが
人を殺めてしまったその方の背景をいろいろと想像し同情してしまいます。
お年寄りは若い人と一緒に住むのが理想
自分が認知症になり始めているかどうかは、自分では分かりません。
そして、自分で自覚した時は既にかなり進んでいると思います。
できれば、お年寄りだけの生活はしない方が良いです。
「子どもたちに迷惑をかけたくないから、年を取ったらそれなりの施設に入る」という考え方もあります。
しかし、アルツハイマー型認知症の実母を介護してみて、
弱い人、助けてあげなければいけない人と同居すると、若い人が得られるものがたくさんあります。
娘たちはそれぞれいろいろな思いを感じたと思います。
10代、20代、30代の若いころは、「自分一人で生きていける!」のですが
でも、「弱い人を助けながら共に生きる」事も体験してほしいです。
まとめ
今回は、B紳士の出来事から、 認知症に対する理解を深めるためにも、違う世代の同居人が必要 という内容をお伝えいたしました。